多くの企業がデジタルマーケティングに取り組む現代において、そのコストを単なる「消費」ではなく、将来の利益を生む「投資」に変えられている企業は決して多くありません。本来、デジタルマーケティングは実施すればするほどデータや知見が社内に蓄積され、将来の利益を生む「資産」にならなければならないはずです。
しかし、なぜ多くの現場で「お金を使い続けても何も残らない」という事態が起きているのでしょうか?そこには、支援会社との不健全な関係性や、情報の属人化といった深刻な構造的課題が潜んでいます。
今回は、当社アクトデザインラボ株式会社が考える業界の課題と、それを打破するために大切にしている独自のスタンスについて、代表取締役の有村がお話しします。
デジタルマーケティングの現場が直面する構造的な課題
私が日々、数多くの企業の現場で強く感じているのは、デジタルマーケティングに投じられた膨大なコストが本来の「投資」として機能せず、その場限りの「消費」で終わってしまっているケースが非常に多いという点です。こうした状況では、企業が自ら主導権を握り、中長期的な成長戦略を描くことは困難です。
デジタルマーケティングでよくある課題
デジタルマーケティングの現場で起きている課題を深掘りしていくと、大きく3つのパターンに分類されます。
- ①特定の担当者だけが知っている情報が多く、属人化してしまっている
- ②コンサル・代理店に業務を丸投げし、ブラックボックス化してしまっている
- ③そもそも社内知見がなく、何から着手して良いかまったくわからない
①特定の担当者だけが知っている情報が多く、属人化してしまっている
インハウス(自社運用)の体制であっても、特定の担当者一人に情報が集中し、業務が完全に個人に依存してしまっているケースです。
あるBtoB企業では、デジタルマーケティングを一身に背負っていた唯一の運用担当者が突然退職してしまいました。その際、広告の運用ルールや過去の検証データが全く引き継がれず、社内には「何も残っていない」ことが発覚したのです。
残されたチームは何から手をつければ良いのかわからず、過去の成功パターンすら再現できないパニック状態に陥り、それまで積み上げた数年分の知見が、担当者の離職と共に一瞬で「更地」に戻ってしまいました。
②コンサル・代理店に業務を丸投げし、依存してブラックボックス化してしまっている
外部の支援会社に実務を丸投げした結果、社内で「何が起きているか全く見えない」という状態です。
ある上場企業では、長年特定の代理店にサイト開発から運用までを任せきりにしていました。ところが、関係性が悪化して他社への乗り換えを検討した際、サーバーの契約やドメインの管理権限をすべて代理店側が握っていることが判明しました。
自社の資産であるはずのサイトが、いわば「人質」に取られたような状態になり、「契約を解除すればサイトが消える」というリスクを恐れて身動きが取れなくなってしまったのです。
結局、不透明で高額なコスト構造を突きつけられても、主導権がないために受け入れざるを得ないという深刻な依存状態に陥っていました。
③そもそも社内知見がなく、何から着手して良いかまったくわからない
新規事業の立ち上げ期などで、社内に知見がないためにどの施策から手をつけるべきか判断できず、外部の言葉に振り回されてしまう状態です。
ある新規事業の現場では、確かな知見がないまま「とりあえず必要だと言われたから」という理由だけで、高額なウェブサイトのリニューアルを優先して進めていました。しかし、本来そのフェーズで必要だったのは、サイトを綺麗にすることではなく「集客と接客の仕組み」を整えることでした。
優先順位を完全に見誤り、業者に言われるがまま「手段」に投資し続けた結果、多額のリソースを投じてもまったく成果につながらないという悪循環に陥っていました。何が正解か分からない不安が、最も効率の悪い投資判断を招いてしまった典型的な例です。
こういった課題が発生してしまう背景
支援会社との間に不健全な「依存」が生まれてしまう背景には、支援側のビジネスモデルが抱える本質的な矛盾があります。
多くの代理店やコンサルティング会社は「工数ビジネス」です。彼らにとっての理想は、少ない工数で長く契約が続くことです。そのため、あえてクライアントのリテラシーを上げない、あるいは情報を開示せずブラックボックスのままにしておくことで「自社がいないと回らない状態」を作り出し、依存を強めて契約を延命させようとする力学が働いてしまいます。
さらに、物理的な「人質」状態も散見されます。本来は事業会社が保有すべきドメインの管理権限や広告アカウント、サーバーの契約を支援会社側が握ってしまい、クライアントが「乗り換えたい」と思っても、システムを止められるリスクを恐れて身動きが取れなくなっているのです。
一方で、企業側にも要因があります。「短期的に広告を回せば獲得できる」といった目先の数字やCPA(顧客獲得単価)だけに捉われ、中長期的に利益を最大化するための「土台作り」を後回しにしてしまう傾向があるからです。
主導権を自社で握るための手間を惜しみ、実務を外部に委ね続ける姿勢が、自分たちで意思決定ができない深刻な依存状態を固定化させてしまっています。
結果として本来得られるべき成果の損失を招いている
これらの課題を放置することは、単に効率が悪いというだけでは済みません。結果として、事業が本来得られたはずの利益や成長機会を大きく損失させている可能性があります。
支援会社に主導権を握られている場合、自社の事業戦略に基づいた柔軟な方向転換ができません。また、過去の施策データが資産として蓄積されないため、同じ失敗を繰り返したり、成功パターンの再現性が失われたりします。
短期的な獲得だけに目を奪われ、中長期的な集客基盤への投資を怠ることは、将来的に「広告費を払い続けなければ集客できない」という、利益を削り続ける体質から抜け出せなくなることを意味します。本来なら「投資」として積み上がるはずのコストが、垂れ流しの「消費」に終わってしまうことこそが、最大の損失なのです。
デジタルマーケティングにおける”理想的”な状況とは
私たちが目指すべき理想の形とは、事業会社側がしっかりと主導権(イニシアティブ)を握っている状態です。デジタル活用はあくまで事業を成長させるための「手段」であり、その舵取りは本来、会社自身が行うべきだからです。その上で、適正で効果的な施策が実施され続け、中長期的に事業が成長していく状況が理想的だと考えています。
①事業会社が主導権を持っている
何よりも第一に大切なのは、事業会社側が自律し、マーケティングの主導権を握っていることです。自分たちがどこに向かいたいのか、どういった成果を求めているのかという主体性がないと、いつの間にか広告を回すこと自体が目的化してしまい、本質的な成果から遠ざかってしまいます。
自社がリーダーシップを持って外部パートナーをコントロールできる状態こそが、健全な事業成長の出発点となります。
②適正で効果的な施策が実施され続ける
主導権を握った上で次に重要となるのが、適正かつ効果的な施策が常に実施され続ける状態を作ることです。
たとえ主導権を持っていても、自社にリソースや知見が不足していれば、何が「今やるべき最善の施策」なのかを判断できず、実行も伴いません。専門性を持つ協力会社の力も適切に借りながら、適正な価格感で、かつ事業成長に直結する施策を間断なく回し続けられる体制を構築することが理想的です。
③中長期的に事業が成長していく
これら「自社の主導権」と「継続的な実行」が噛み合って初めて、中長期的な利益の最大化という結果につながります。
各種の実績データやノウハウ、ITリソースの権限にいたるまでを自社の「管理可能な資産」として蓄積できていること。過去の成功も失敗もすべてを未来の意思決定に活かし、単なる「コスト」を事業を伸ばし続ける「投資」へと変えていける状態こそが、私たちの目指すゴールです。
理想的な状況を作るために必要なこと
このデジタルマーケティングが消費ではなく「投資に変わる仕組み」を構築するためには、事業会社と支援会社の双方が、これまでの依存関係から脱却し、新たな役割を担う必要があります。
事業会社:管理可能な資産を自社で保有する
事業会社側に求められるのは、各種のデータや施策の履歴、チーム体制といった情報を、他社任せにせず「自社の資産」としてしっかり保有・管理することです。外部に任せきりにするのではなく、自分たちが主導権を握るためのリテラシーを高め続け、常に施策の評価基準を自社内に持っておくことが不可欠です。
たとえ担当者が交代しても、スムーズに知見を引き継ぎ、過去の経験を次の戦略に活かせる基盤を自ら維持し続けることが、自律への第一歩となります。
支援会社依存度を下げ「監督」として伴走する
支援会社の役割は、単に作業を請け負うことではなく、クライアントが自ら主導権を握れるように導く「監督(ディレクター)」や「セカンドオピニオン」であるべきです。
私たちは、あえて支援に「期限」や「目標」を設定し、段階的にクライアントの自立を促していく取り組みを行っています。支援会社がいないと何もできない状態を作るのではなく、最終的にはクライアントが自分たちで適正な判断を下し、リーズナブルに施策を回し続けられる「セミインハウス化」を実現することこそが、私たちの本質的な価値提供です。
アクトデザインラボが実施していること・大切にしていること
私たちが具現化しているのは、クライアントが自律してデジタルマーケティングを「自社の武器」として使いこなせるようになるための仕組みです。
6つのカテゴリーによる「身体測定」で現在地を知る
最初に行うのは、現状を客観的なデータで可視化する「身体測定」です。「商品力」「運用力」「基盤力」「集客力」「接客力」「育客力」の6カテゴリーで分析し、自社の強みと成長を阻むボトルネックを明確にします。データに基づいた正しい順序で改善を進めることが、最短ルートでの成果につながります。
「期間限定」の監督として自立した組織(セミインハウス)を創る
私たちの役割は、実作業を代行し続ける「作業屋」ではなく、クライアントが自律するための「監督」です。最終的には、専門的な実行部分は外部のプロを適正価格で使いこなしつつ、自社で正しい意思決定ができる「セミインハウス」の状態へと導きます。
自分たちで舵を取り、効果的にマーケティングを回し続けられる組織文化を創り上げること。それこそが、私たちの真の提供価値です。
資産を蓄積し属人化を防ぐツールの開発
先ほど述べた「更地に戻る絶望」をなくすために、アクトデザインラボでは、ツールを自社開発しています。過去の全施策の履歴や広告の結果、さらにはドメインやサーバーの権限情報まで、あらゆる情報を「会社の資産」として一箇所にストックし続けるプラットフォームです。
たとえ担当者が入れ替わっても、蓄積された知見をAIが解析し、過去の教訓を即座に引き出せる環境を構築します。二度と同じ失敗に予算を投じることなく、投資を右肩上がりの成長へつなげることが可能になります。
2026年2月段階ではまだ公開はしていませんが、今後順次お客様をはじめとして、サービスを提供させて頂く予定です。
最後に
デジタルマーケティングにかけるコストが一時的な「消費」で終わってしまっている。あるいは、外部の支援会社に依存しすぎて実態が把握できていない。そんな不安を感じていらっしゃる企業様は、ぜひ一度私たちアクトデザインラボにご相談ください。
現状を可視化する「身体測定」から、中長期的な利益を生み出し続ける仕組みづくりまで、貴社が主導権を握って成長し続けるための最適なプランをご提案いたします。

